1.遺言書の有無を確認しましょう
初七日法要が終わってひと息ついたら、相続手続きの中核ともいえる遺産の分割に向けて準備を始めます。
まず確認しておきたいのが、遺言書の有無です。遺産分割を終えたあとに遺言書が出てくると、一からやり直しになってしまいます。遺品を整理しつつ、遺言書が保管されていそうな場所を十分に調べましょう。
遺言書を見つけたら、法律で決められた手順を守ることが大切です。
公正証書遺言以外の遺言書、つまり自筆証書遺言などは、家庭裁判所で検認の手続きをしなくてはなりません。
また封印のある遺言書は、検認に先立ち家庭裁判所で開封することが定められています。
2.検認を受けないと遺贈による登記ができない
検認は、裁判所が遺言書の現況を記録して偽造・変造を防ぐという、一種の検証手続きです。遺言書の存在を相続人や受遺者などの利害関係人に知らせる目的もあります。
検認を怠ったり勝手に開封したからといって遺言が無効になることはありませんが、過料の処分を受けます。また実務上、検認済証明のない遺言書では不動産登記や銀行の名義変更などの手続きができません。
検認の請求は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に申立書などを提出して行います。すると検認期日が指定されますので、あらためて家庭裁判所に出向き、遺言書の原本を提出して検認を受けることになります。
当日立会わなかった相続人などには、検認終了の通知が郵送されます。
遺贈(いぞう)とは?
~遺言では、相続人以外の他人にも財産を譲ることができます。この場合を遺贈といいます。
3.遺言執行者がいるときはすぐ連絡をとりましょう
ところで、遺言に書かれた内容を実現することを遺言の執行といいます。
遺言に遺言執行者が指定されているときは、すみやかに連絡をとりましょう。遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の権限を持ち、相続財産もその者が相続人などへ交付するかたちになります。
遺言執行者の指定がない場合は相続人が協力して遺言を執行することになりますが、必要に応じて家庭裁判所で選任してもらうこともできます。
ここがポイント! |
4.相続人が誰なのか確定する
遺産分割の協議に入る前に欠かせないのが、相続人を確定するための戸籍の調査です。
調査などしなくても・・・という思い込みは禁物です。故人には認知した子供がいるかも知れません。あるいは、知らないうちに養子縁組をしていたなどという話も決して珍しくないのです。
相続人を確定するには、少なくとも故人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍の謄本が必要になります。これらの書類は財産の名義変更の手続きなどでも必要になりますので、最低1部は用意しておかなければなりません。とはいえ、連続した戸籍をどうそろえればよいのか戸惑う人も多いことでしょう。
この場合は、専門家である司法書士に依頼するのがよいでしょう。
ここがポイント! 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をとらないと、相続人は確定できない。 |
5.遺産の内容と価額を調査しましょう
相続人の調査とともに遺産の調査も進めていきましょう。プラスの財産はもちろんマイナス財産(借金)もすべて洗い出し、財産の目録を作成しましょう。財産の目録は遺産分割協議の基本資料になります。決まった形式はありませんが、まずプラスの財産とマイナスの財産に分け、たとえば、プラス財産ならば、その中で、土地、建物、預貯金などとさらに分けるかたちで書いていきましょう。
故人の財産を正確に把握することは同居の家族でも容易ではありません。そのため預金通帳や株券、保険証券、不動産の権利証といったものは、普段から保管場所を家族で認識しておくことが大切です。
とりわけ借入金などの債務は、漏れがあると大変です。積極的に隠されていることもあるので、契約書やカード、あるいは督促状など、故人が保管しそうな場所や郵便物を念入りに調べましょう。不動産の登記事項証明書を取り、抵当権の設定の有無を調べるのも有効です。銀行などからの借入金は残高証明書を取って確認します。
なお、年間所得が2,000万円を超える人なら、毎年の確定申告時に作成が義務付けられている「財産及び債務の明細書」がよい資料になります。
ここがポイント! ①遺産をリストアップして財産目録を作成する。 ②財産の内容や証券類の保管場所など、普段から情報を共有しておく 。 |
6.相続放棄や限定承認を検討する場合
早急かつ慎重に検討しましょう
遺産調査の結果を踏まえ、相続を承認するか放棄するのか検討します。この検討のための期間(熟慮期間という)は3ヶ月ですが、調査に時間がかかるなどの事情がある場合には、家庭裁判所に期間の延長を請求することも可能です。
遺産調査の結果、明らかに債務超過であるときは相続放棄をするとよいでしょう。
債務超過かどうかわからないときは限定承認が有効ですが、限定承認は相続人全員の同意が必要です。ひとりでも反対する人がいる場合、債務の承継を免れるにはそれぞれが放棄の手続きをとるしかありません。
相続放棄や限定承認をする場合は、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に、故人の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出しなければなりません。債権者などに意思表示しただけでは効力がありませんので注意してください。
ここがポイント! |