相続放棄については、誤解した認識をお持ちの方が、意外と多いようです。
例えば、Aさんが亡くなり、相続人がAさんの子供である長男Bさんと次男Cさんという場合に、 次男Cさんが「この前、長男Bと遺産に関する話し合いをしたが、自分は生前にいろいろと父から援助を受けていたので、相続を放棄した」と言われることがあります。
さて、これは、相続放棄にあたるのでしょうか?
この場合は、単に遺産分けの話し合いの中で、自分が本来貰うべき財産を受け取らないという合意をしたというだけのことです。
つまり、プラス財産(預貯金や不動産など)からの自分の受け取り分を、自主的にもらわなかったというだけで、もし、父親であるAさんに多額の借金があることがわかった場合、「自分は、相続を放棄したから関係ない!」ということにはなりません。
相続人は、故人のプラス財産もマイナス財産(借金)もすべて引き継ぎます。
そして、相続放棄をするということは、家庭裁判所に対して「私は相続人にはなりません」という申し出をして、家庭裁判所に正式に受理してもらうということです。
ここがポイント! ・遺産分割協議の中で財産を一切もらわない合意をした。
→ 相続放棄ではありません。 ・家庭裁判所を対して相続放棄の申し出をして、正式に受理された。 →これが相続放棄です。 |
相続放棄とは、故人が、例えば何千万円や何億円の借金をかかえたまま亡くなった場合に、相続人だからといってその借金を引き継いで払っていかなければならないというのは、あまりにもかわいそうなので、その救済措置としてもうけられている制度です。そのかわり、故人のプラス財産も、一切引き継げません。
ただし、相続放棄はあくまで、相続人からの申し出があって、初めて受理されるので、故人の作った借金は責任を持って払っていくという方は、相続放棄をしないという選択ももちろんあります。
逆に、相続放棄をしないということは、プラスの財産もすべて引き継げるので、
・借金はあるが、払えない金額ではない。
・故人が作った借金は相続人として責任を持って払っていきたい
・どうしても先祖代々の土地・家屋は手放したくない。
・故人のコレクション(貴重品)などを手放したくない
というような場合などは、プラス財産をきちんと相続した上で、借金も頑張って払っていくということになります。
相続放棄の申し出後に、家庭裁判所から正式に受理証明が出ると、そこで相続放棄の完了です。
相続放棄の完了によって、故人の相続財産に関しては、赤の他人ということになります。
裁判所からお墨付きが出ているので、故人の債権者から支払いを請求されても、まったく無視して構いません。
あと、相続財産に関しては赤の他人になりますが、相続放棄の手続をしたからといって、故人と縁が切れて戸籍上も他人となってしまうということはないので、その点はご安心下さい。
あくまで、相続財産に関して故人と関わりがなくなるということです。
さて、それでは相続放棄について、手続きの方法なども含めて、もう少し具体的に見ていくことにしましょう。